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今回のドクターズコラムは、豊田市戸塚町にある「いしぐろ在宅診療所」の石黒謙一郎院長にインタビューいたしました。地元豊田市出身の石黒院長。医学部時代に豊田市の在宅医療の現状を知り、「早く地元の在宅医療に携わらなければ」と決意したそう。豊田市内ではめずらしい、24時間365日対応の在宅診療所を2019年5月に開業。豊田市の在宅医療の最前線で診療にあたっています。
先生が在宅医療を志したきっかけを教えてください。
医学部に入学したときに、病院で亡くなる方の中で「家に帰りたい」とおっしゃる患者さんがとても多いことに気がつきました。その当時は、あまり在宅医療を知らなかったのですが、ある時に在宅医療をしている先生が授業にきて、「皆さんはどこで死にたいですか?」と私たち学生に話をしました。その時は、自分の最期を考えてなかったので「病院で亡くなるのは嫌だな、家が良いな」というぐらいでしか考えていませんでした。ですがその次に、どこで亡くなる方が多いかというグラフを見せて頂き、日本では8割ぐらいの方が病院で亡くなり、家で亡くなる方は1割という現実を知りました。先生は、「在宅医療とは、家で亡くなる1割の人を少しずつ増やす診療とも言えます。そうすれば将来皆さんも家で亡くなることもできるかもしれません。そういう世界ができると良いですね。」と授業の最後に話をされました。
それを聞いて、自分自身も家で死にたいし、家で最期まで過ごしたいという人の手助けをできるのは、とても意味があることだと感じました。この授業が、私が最初に在宅医療に興味をもったきっかけです。
いしぐろ在宅診療所の特徴について教えてください。
当院の特徴は「対応の早さ」にあると思います。患者さんが家に帰りたいと言ったら、その日のうちに家に帰れるように、受け入れの準備をしています。医師・看護師・事務員を含めて迅速に対応し、全員で協力して1秒でも早く患者さんが自宅に帰ることができるということを大切にしています。
いしぐろ在宅診療所にはどのような病気の患者さんが多いですか?
在宅医療の適用は、「一人で病院に行って一人で帰ってくることができない人」です。その判断は、医師の判断です。ですので、通院に困っている方は、まずかかりつけの先生などにご相談することをおすすめします。
疾患としては、認知症・高血圧・糖尿病の方が多いです。また、当院の特徴としては、ガンの末期や毎日点滴が必要な方や中心静脈・胃ろう・尿道カテーテルの方も断らずに受けております。緩和ケア研修もしっかり受けた上で診療しておりますので、痛みのコントロールや、在宅での緩和ケアを得意としております。小児で人口呼吸器をつけている方も診ています。
方針としては病気の内容で家に帰りたい願いを断るということを、できる限りしないよう心がけています。
末期ガンについて教えてください。
どのガンであっても、最期は少しずつ動けなくなって一人で買い物や身の回りのことができなくなって行く方が多いです。その次は、少しずつ食事が摂れなくなり、水分も飲めなくなり、最期を迎えるということになります。そういった方でも、最期まで自宅で過ごすことができます。
当院のサポートがあれば、ガンであっても、寝たきりになっても、さらには独居の方でも、最期までご自宅で過ごすことができます。末期ガンの方は家に帰ってくることが難しいといわれるケースが多いですが、当院は疾患によって断ることがないので末期ガンの患者さんは多くいらっしゃいます。
末期ガンの治療について教えてください。
自宅で緩和ケアを行うことができます。大切なことは「痛くないこと・苦しくないこと・安心できること」です。家に帰ってきても、痛みがとれなければ、つらい状況となってしまいます。そのため、まずは痛みのコントロールが大切です。痛みがとれれば、ご自宅で自然とやりたいことや、食べたいものが出てくると考えています。
家族と過ごせる時間や、外出をする時間は、とても大切です。苦痛がとれれば、あとは安心して生活頂けることを考えていけたらと思います。そのために、24時間365日体制で往診を行っております。深夜でも、年末年始でも診察に伺います。患者さんの声を聞くと「以前は救急車を呼ぼうか、明日病院に行こうか、迷うときがあり怖かった。
でも今は電話一本で夜でも家に来てくれるから安心です。」とおっしゃって頂いており、少しは安心も提供できているのではないかと思っています。せっかくご自宅に帰ってきて頂くので、「痛くないこと・苦しくないこと・安心できること」を達成し、その方らしく、できるだけご自宅での生活を楽しんで頂けるように心がけています。
看取りの割合について教えてください。
患者さん、ご家族より「自宅で、最期まで、亡くなるまで、過ごしたい」というご希望があれば、そのご希望を90%近く叶えることができております。これは、いしぐろ在宅診療所だけでなく、患者さん、ご家族、訪問看護師さん、ヘルパーさん、ケアマネジャーさん、訪問薬剤師さん、訪問入浴さん、福祉用具さん、酸素会社さんなどなど、皆さんのご協力があって初めてできることだと思います。
在宅でのお看取りは、もちろん大変なこともあります。しかし、ご家族だけでなく、我々在宅医療のプロが、みんなでサポート致します。もし患者さんが「家に帰りたい」とおっしゃったら、まずは在宅医療を試してみて頂きたいと思っております。
訪問診察をしていて良かったことを教えてください。
毎回良かったといつも思っていますが、患者さんから「来てくれて助かったわ、ありがとう」と言われるのは本当に嬉しいです。他にも、私自身の地元が豊田なので、自分のお世話になった方や、同じ崇化館中学校や豊田西高校の先輩方を診ることも多いです。「先生後輩か!」「先生で良かった!」と言ってくれたことは、医者としてだけでなく石黒謙一郎、一個人として、良かったなあと思います。
医療・介護業界の方へメッセージをお願いいたします。
医療は、医者だけでは成り立たない業種です。特に在宅医療では、多職種の方々のほうがメインなんです。それぞれの専門の方たちが手伝ってもらって、在宅医療が成立しています。私たち医師は、現場の皆さんの意見をしっかり聞きながら、患者さんの病状を診て、「病状の先を照らして、共に歩んでいく」というイメージです。患者さんと接する時間も私たちに比べて多い場合もありますし、患者さんの声を一番聞いているのも介護士さんや看護師さんです。
私たちもそういった方たちにとても助けられております。地域の在宅医療の1つの歯車として、一診療所としての役割を果たしていきたいと思っています。改善点やこうしてほしいと言った声がありましたら是非色々と教えていただきたいと思います。宜しくお願い致します!