〒471-0062 豊田市西山町3丁目30−1
TEL: 0565-34-3000
今回のドクターズコラムは、豊田市西山町にある豊田地域医療センターの堀口 高彦院長にインタビューいたしました。 子どもからお年寄りまで全ての世代から必要とされ、医療・介護・福祉をつなぐ病院として日々診療にあたっています。豊田市の地域医療の一端を担っている基幹病院として力を入れていることや、これから取り組んでいきたいことについて伺いました。
堀口院長が目指す豊田地域医療センターの役割を教えてください。
私が考える当院の役割は、豊田市内の3つの基幹病院(トヨタ記念病院・豊田厚生病院・豊田地域医療センター)と医師会との結びつきを強め、地域医療を提供する上でスムーズな情報交換を行えるようにすることです。3つの基幹病院が連携し合い、それぞれの役割を果たしていくことが豊田市の医療を支えるために必要かつ、医療を受ける市民に求められていることだと考えています。
国からは「健康日本21(第三次)」で健康寿命(人が日常生活に制限なく生きていける寿命)の延伸が目標として掲げられています。超高齢社会では今後在宅での療養が増えていくことを想定しているため、当院は訪問診療や訪問看護、訪問リハビリにも力を入れマンパワーの確保もしています。現在は約600名の方の在宅療養を支えており、当院が「日本一の総合診療」を行っていると自負しています。当たり前のことですが、地域医療は医師だけでは行えません。医師や薬剤師、看護師、セラピストなどの医療従事者が多職種間で連携し、それぞれの立場から意見交換をすることが大切です。そのため当院では意見交換がしやすい職場環境を整えるようにしています。診断や治療方針の決定は医師が行いますが、調剤や看護、リハビリに関してはその職域のプロに任せて治療を進めていきます。
コロナが蔓延している状況下では、コロナの重症者は病院の構造上呼吸管理が難しいため他の医療機関を案内しています。ただしコロナの軽症から中等症の患者は、当院でしっかり診療にあたり発熱外来の対応も行っています。この豊田市の密な医療の提供体制は周囲の市と比較してもトップレベルだと考えており、これからもこの医療体制を続けていくことが当院の責務です。
今の時期増加する花粉症に対して、まだまだ三河地区はアレルギー専門の医療機関が少ないのが現状です。現状を打破するために、当院では新しくアレルギーセンターを開設しました。花粉症を含めアレルギー疾患は、国民の2人に1人が罹患していると言われており、多くの方がその症状に悩まされています。アレルギー患者さんに対し呼吸器内科や耳鼻咽喉科、皮膚科等の各診療科が連携を取ることで、重症や難治性のアレルギー疾患の治療に取り組んでいきます。アレルギー疾患に対して先進的な医療に取り組んでいくことも当院の役割のひとつです。
豊田地域医療センターの強みを教えてください。
全国の医療機関で悩まされている医師不足の問題があるにも関わらず、当院では若い医師が多く勤務していることが強みです。当院では以前からリクルートに力を入れており、どうしたら若い医師が来てくれるのかを考え、当院は「総合診療」に力を入れました。日本の医療は専門性が強すぎるイメージがあります。例えば新たに開業する医療機関が内科として標榜するのではなく、消化器内科や腎臓内科のような間口を狭くしてしまうクリニックが増えています。日本の医療に対して海外では、一人の医師が様々な分野の疾患を総合的に診ることができるという特徴があります。当院では海外のような総合診療の体制を取り入れ、1人1人の医師が常に成長できる環境作りをしています。
外部の医療機関との協力体制を整えているおかげで、医師の派遣をスムーズに行なうことができ、派遣された医師も各専門領域の教授職レベルの医師が来てくださることも強みの一つです。
ほかにも、当院は開院当初から人間ドックや健康診断といった予防医学にも力を入れて行っています。現在は1日あたり約160名の方が受診され、豊田市の健康診断のうち約4割は当院が担っています。
高齢者に多い呼吸器疾患を教えてください。
高齢者に多い呼吸器疾患はCOPD (慢性閉塞性肺疾患)で、年間約16000人が亡くなっています。COPDは高齢者が若い頃から30〜40年近くたばこを吸い続けた結果、息苦しさや咳・痰を主症状として発症する疾患です。COPDは早期発見が大切な疾患ですが、患者自身が初期症状として出てくる息苦しさを加齢によるものと誤った認識をしやすいため、発見が遅れやすいです。
発見が遅れ疾患が進行すると身体活動性の低下を引き起こし、歩行困難や食欲不振、鬱傾向になり他の疾患も引き起こしてしまいます。COPDと聞くと肺の疾患と思う方もいるかもしれませんが、「全身性の疾患」として捉えるようにと治療のガイドラインにも示されています。もし少しでも息苦しさを感じた場合は、すぐに医療機関の受診を推奨しています。
早期発見・早期治療をすることで、運動機能の低下予防に繋がり健康寿命の延伸にもなります。COPDはじっとして動かなければ何も症状が出ない病気です。早期発見のために、高齢者の方は毎日運動することが大切です。
COPDの治療において他職種に求めることについて教えてください。
薬剤師には薬のプロとして、呼吸器の学会が推奨している「ホー吸入」を患者さんに伝え、吸入薬の指導を丁寧に行っていただきたいです。吸入のやり方によっては、薬の吸入量が約3割も変わってしまいます。
看護師や介護士には誤嚥性肺炎の予防や、身体活動低下の予防のために患者さんのケアに取り組んでいただきたいです。治療を進める上で、それぞれの専門職が医師に言われたとおりに仕事をするのではなく、医師に治療方針の提案をできるような関係性が大切だと思っています。
作業療法士や理学療法士の方は身体活動性を維持するためのリハビリ、栄養士の方はCOPDの影響で低栄養や貧血になりやすいので栄養管理が重要です。
COPDの患者100人のうち1〜2人は肺がんに罹患されてしまうため、緩和ケアも多職種で取り組んでいく必要があります。そのためにまずは当院が多職種医療のモデルケースとして、積極的に取り組んでいく必要があると考えています。
日本喘息学会が行う第一回の吸入エキスパートの試験があります。実際に患者さんと接する機会のある医療従事者の方にはぜひ受験していただきたいです。
他職種、新聞を読んでいる方へ向けてメッセージをお願いします。
当院は総合診療を軸として、急性期以降のすべての医療とケアをワンストップで提供する「コミュニティ・ホスピタル」を理想として日々診療にあたっています。少なからず患者さんは何らかの疾患を抱えた逆境の状態で病院に来院されると思います。そのような患者さんに対して不親切な対応や偉そうに振る舞うことをしないこと、医療従事者として「らしく、ぶらず」を大切に働くようにと伝えています。
子どもからお年寄りまですべての方に優しく、地域にとって必要な医療・介護・福祉をつなぐ病院としてこれからも邁進してまいりますのでこれからもよろしくお願いいたします。