今回は、松平・下山地区を中心に介護・福祉事業を展開している「株式会社SMIRING」代表取締役社長 中根 成寿様とソーシャルクリエイト部 山口達也様にお話を伺いました。今年2月にはオープン前の「スープタウン」を取材しましたが、今月号では4月にオープンしてから現在の様子や会社として大切にしていること、そして前回は伺えなかった社長の想いをお聞きしました。
スープタウンは近隣地域の中でどのような存在でありたいと考えていますか
スープタウンは「スープの冷めない距離で暮らそう」をコンセプトに、物理的な距離だけでなく精神的な心の距離感を重視したコミュニティ形成を目指しています。このコンセプトは困った時に助け合える関係性を築くことを意味していて、施設内では高齢者・障がい者・子供が共に暮らし、高齢者の洗濯物を障がいを持った方が行う等の支え合いの構造が構築されています。この支え合いを施設内だけでなく地域全体に広げ、「スープの冷めない距離」で暮らせる街づくりを理想としています。松平地域は都市部から距離があり、矢作川や巴川を越えるごとに介護や福祉のサービスが少なくなる傾向があります。スープタウンはスタッフの確保やサービス提供の観点から、どちらも補うことの出来るこの場所を拠点にしました。
スープタウンが他の介護施設と比べた際の強みを教えてください
スープタウンの最大の特徴は、一つの建物内に高齢者・障害者・子供・地域住民が混ざり合って暮らしている点だと思います。こういった複合施設は全国にもあると思うのですが、他の複合施設では敷地内に隣接してそれぞれの分野の建物があるケースが多いです。しかしスープタウンでは各分野が一つの建物に集約されさらに各分野を隔てる壁がなく、生活介護と就労継続支援B型が混在するような「ごちゃまぜ感」のある施設はスープタウン独自の形態だと思います。この形態にしていることで、例えば有料に入居している方の洗濯や清掃を就労B型のスタッフにしてもらうような連携が取りやすいことも強みです。また、2階のメインフロアが地域住民に向けた飲食できるキッチンラボ(食堂兼カフェ)として一般開放されており、施設利用者ではない方も自由に利用できる構造も特徴の一つだと思います。
スープタウンに入居するに際しての施設の魅力を教えてください
スープタウンの魅力は入居者とその家族が気軽に面会・交流できる点が魅力の一つです。スープタウン内にはキッチンラボがあり、そのスペースで家族と入居者が一緒に食事をとったり自由に面会することもでき、家族の団らんの場として提供しています。また他の介護施設から移られてきた入居者の中には、スープタウンに移ってきてからは「生きている」感覚を取り戻したと感じる人もいます。入居してからの生活では、畑仕事や洗い物、フラトレなど多様な活動の選択肢があり入居者が自分で選べる点が魅力の一つです。現在入居している方で洗い物をとても手伝ってくれる人がいたり、それぞれの役割を発揮できる環境があります。
中根社長が考えるスープタウンで一緒に働きたいスタッフ像を教えてください
スタッフには「人が見れる力」を求めています。スープタウンは複合施設であるため、就労B型のスタッフも一緒に仕事をしています。周りの人が見れない人はB型の人に対して配慮が出来ない人が多いと感じています。そのためスープタウンで働くスタッフには人の言動を観察し理解できる人物像を求めています。また会社の理念にもある「黒子」として介護職の枠にとらわれず、必要な時に必要なサポートを提供できる力もあると良いと思います。
働くスタッフが中長期的に働いてもらえるように意識していることを教えてください
前項でも話をしているのですが、基本的に働くスタッフに対しては「黒子」として働くようにと伝えています。「黒子」とは利用者に対して必要以上に干渉せず、入居者の自立を促す姿勢を基本とすることです。介護職で働くスタッフは「心配症」な傾向があるため、過度な介入をする人が多いですがなるべく介入を控えることで利用者が自立して生活出来ることを理想としています。また、働くスタッフに対しては柔軟な働き方の提案を行うようにもしています。例えば最近あったケースでは、会社で運営している企業主導型保育園に子どもを預けている方が、始業時間と登園時間のタイミングが合わず悩んでいました。その方に対しては登園時間になるまでは、子どもを連れた状態で介護にあたってもらうことを提案し悩みを解消しました。もちろんきちんと仕事はこなしてもらう上での提案でしたが、案外子どもを連れた状態での業務は利用者さんからの受けが良く、普段よりも笑顔が多かった印象があります。以前のインタビューの際にも少し紹介したのですが、会社からハイブリッドワークという働き方も提案できます。ハイブリットワークでは、高齢者介護や障害者支援、子供のケア、地域活動などの会社内で取り組んでいる複数業務を組み合わせた働き方が可能になります。例えばデイサービスと有料老人ホーム間のヘルプなど、多様な経験を積む機会として提案し取り組んでもらっています。
現在スープタウンで働いている方について教えてください
現在働いているスタッフの年代は20代から70代まで幅広く、定年後も契約更新で働き続けるスタッフもいます。スタッフから「辞めたいです」という申し出がない限りは継続して働いてもらっています。基本的には豊田市内在住者が多く、施設から20〜30分圏内通勤範囲のスタッフがほとんどです。スタッフの人柄は多様で、様々なバックグラウンドを持つ人々が働いています。
スープタウンのコンセプトを教えてください
元々スープタウンを考えている時に自分たちや自身の親・親族を入れたいと思える施設を作りたいという気持ちから始まりました。その中で上がってきた項目としては、入居してからの施設生活に幅広い選択肢がある点や、楽しく生活ができる可能性が数多くある点があり、そこを追及して完成したのがスープタウンです。入居する本人も預けるご家族もどちらも「スープタウンに預けると楽しそうだよね!」と思ってもらえるような施設づくりを目指しています。
会社として今後どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか
日常生活には「ハレの日(特別な日)」と「ケの日(平凡な日)」がありますが、会社としては「ケの日」を大切にしたいと考えています。入居者や利用者さんが一日を振り返った時に充実した一日だったと思えるような環境を整えていきたいです。働いているスタッフもケの日を充実した生活が送れるようにサポートしてもらうようにと伝えています。現在特養の運営にも立候補しているため、今後の主要な取り組みとして力を入れていきたいと考えています。会社を立ち上げた時からの想いとしてサービスが行き届いていない地域へのサービス提供はこれからも意欲的に取り組み、皆が分け隔てなくサービスを受けられる地域づくりを目指しています。
この新聞を読んでいる方へ向けたメッセージをお願いします
スープタウンは複合施設として訪問サービスや障がい、介護等の多様なサービスを展開していますが、一般の方でもキッチンラボで食事をすることができます。現状障がいや介護に関わりのない方でも「どんな建物なのか」や「どんなサービスが提供されているのか」、「どんな人が利用しているのか」といった興味がある方はぜひ一度スープタウンに来ていただきたいです。よく地域の方からも「一般の人が入っても大丈夫なのか」という声を多くいただくのですが、多くの方にスープタウンのことを知ってもらいたいと思っていますので、是非お越しください。
インタビューを終えて…
今回ご紹介した「スープタウン」は、スマイリングが約5年前から継続してきた「スープ会議」で集められた声や想いを形にした場所です。取材を通して「スープの冷めない距離で暮らそう」というコンセプトと、それを支える「黒子」としての存在に込められた想いや信念がひしひしと伝わってきました。そして、さまざまな立場の人が関わることで生まれる選択肢を柔軟に取り入れられていることもスープタウンの魅力だと感じました。
また今回の取材で施設内も見学させていただきました。スマイリングのスタッフとともに感情環境デザイナーやコピーライター、コミュニティーデザイナーなど、多彩な専門家も加わっているそうで、創り上げたその空間はなんだか新しくも懐かしさを感じました。
館内を見学する中で特に印象的だったのが、ノートや壁、窓ガラスに直接書かれたメッセージです。窓に書かれたメッセージは外の空が背景となり、その言葉がまるで空に浮かんでいるかのように映ります。光や風景と交わりながら読むそのひとことに心が動かされます。キッチンラボの窓からは春になると桜が見え、その窓にも桜にまつわるメッセージが添えられています。たった数日間の景色のために用意されたその言葉にも心が暖まり「桜の咲く時期にも来たい」と思える空間でした。
そのほかにも、スプーン型のドアノブなど、細部にまでこだわりと遊び心が詰まっており、来るたびに新しい発見がありました。介護施設としての利用だけでなく、友人や家族と食事をする、今の自分とリンクするメッセージを探しにくるといった過ごし方も面白いかもしれません。